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東京地方裁判所 平成8年(特わ)3456号 判決 1997年5月22日

本店所在地

東京都江戸川区松島一丁目四一番一七号

株式会社

蜂の宝本舗

(右代表者代表取締役 徳永勇治郎)

本籍

東京都江戸川区松島一丁目二六四六番地

住居

同区松島一丁目四一番一七号

蜂の宝本舗ビル

会社役員

徳永勇治郎

昭和八年一月二九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官石垣陽介並びに弁護人加々美博久(主任)、才口千晴及び北澤純一各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社蜂の宝本舗を罰金四八〇〇万円に、被告人徳永勇治郎を懲役一年六月に処する。

被告人徳永勇治郎に対し、この裁判が確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社蜂の宝本舗(平成七年二月九日組織変更以前は有限会社蜂の宝本舗。以下「被告会社」という。)は、東京都江戸川区松島一丁目四一番一七号(平成七年一月二九日以前は同区松島一丁目三四番一〇号)に本店を置き、蜂の巣構成物を素材とする加工食品の製造販売等を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成七年二月六日以前は五〇〇万円)の株式会社であり、被告人徳永勇治郎(以下「被告人」という。)は、右組織変更の前後を通じて被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成四年三月一日から平成五年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億一六四八万七七一七円(別紙1修正損益計算書参照)であったのにもかかわらず、平成五年四月三〇日、東京都江戸川区平井一丁目一六番一一号所在の所轄江戸川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五八五五万七〇五二円で、これに対する法人税額が二一一九万八八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第二八七号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額八〇四二万二六〇〇円と右申告税額との差額五九二二万三八〇〇円(別紙3ほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成五年三月一日から平成六年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億九四九九万六八〇六円(別紙2修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成六年五月二日、前記江戸川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六六〇三万九二八四円で、これに対する法人税が二四〇〇万四六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億四七三六万三五〇〇円と右申告税額との差額一億二三三五万八九〇〇円(別紙3ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  井上清の検察官に対する供述調書

一  徳永徹也及び刑部博の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の受取利息調査書、損金の額に算入した道府県民税調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の捜査報告書(五通)

一  東京法務局江戸川出張所登記官作成の登記簿謄本、閉鎖登記用紙謄本及び閉鎖登記簿謄本

判示第一の事実について

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(平成九年押第二八七号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の支払手数料調査書及び損益調整調査書

一  押収してある法人税の確定申告書一袋(前同押号の2)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法(平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法。以下同じ)四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予し、さらに、被告人の判示各所為は被告会社業務に関してなされたものであるから、被告会社については法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で罰金四八〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、判示のとおり蜂の巣構成物(プロポリス)を素材とする加工食品の製造販売等を営む被告会社の代表取締役であった被告人が、売上を除外するなどの方法により所得を隠匿し、二事業年度にわたって合計一億八〇〇〇万円余の法人税をほ脱した事案である。ほ脱額も右のとおり高額であり、ほ脱率も通算で約八〇・一パーセントに達している。そして、所得秘匿の態様も、納税申告事務を依頼していた知人に納税額の減税を指示したり、顧客を選別して売上を除外して、内容虚偽の財務諸表を作成し、これに基づき納税申告をするなどしていたものであり、悪質である。また、被告人は、本件犯行に及んだ動機について、被告会社の設備投資等の資金を捻出するためなどと供述しているが、国の財政が国民の公平な税負担の上に成り立っていることを考えれば、いかなる理由にせよ不正な行為で納税義務を免れ蓄財を図ることなど到底許されるところでなく、酌量に値しない動機である。以上の諸点からすれば、被告人及び被告会社の刑事責任には重いものがある。

しかしながら、被告人は、本件発覚後は捜査に協力し、反省の情を示していること、被告人には業務上過失傷害による罰金全科一犯があるのみであること、被告会社は、その後本件起訴にかかる分について本税、延滞税等を完納し、適正な納税を行う体制を整備していることなど被告人及び被告会社のために斟酌すべき事情も認められる。

そこで、これら本件の審理に現れた一切の事情を併せ考えた上被告会社及び被告人を主文のとおりの刑に処し、被告人についてはその刑の執行を猶予するのを相当と判断した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社につき罰金六〇〇〇万円 被告人につき懲役一年六月)

(裁判官 阿部浩巳)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

別紙2

修正損益計算書

<省略>

別紙3

ほ脱税額計算書

有限会社蜂の宝本舖

<省略>

有限会社蜂の宝本舖

<省略>

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